NO.054 大下英治『流通の覇王 小説「スーパー戦争」』(光文社文庫)
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この本は、スーパー業界の水面下を書いたものといえる。出店、広告など表立って出てこない裏側も含めて流通業界を書いた企業小説であるが、これはかなり事実に即したものであると言ってもよいと思う。たぶんこれを読んだ人のほとんどが、流通業界に詳しくなくても、特定の企業・人物を思い浮かべることができることだろう。
主人公は、関西に地盤を持つスーパー「レインボー」の鳴門光。関西から関東への進出、チェーンの拡大、競合他社との水面下での駆け引き、その信念に基づく拡大政策。関東進出で最初に殴り込みをかけたのは、南部流通グループの本拠地とも言える所沢。南部流通グループの総帥・楠鋭二は、南部鉄道グループと連携して、進出の阻止を図る。関東進出では、南部流通グループとだけでなく、関東で急成長した「トーキョー堂」とも熾烈なシェア争いを繰り広げる。絶対勝つ、という強い意志で、会社は急成長していく。
この小説は1995年のものなので、今から約10年前のものである。この10年の間に流通業界は大きく変わった。拡大成長の時代から考えられないくらい不振である。この小説の「レインボー」のモデルとなったD社は、今拡大路線から大変な苦戦を強いられている。堅実路線で本業中心に拡大してきた「トーキョー堂」のモデルのI社が善戦しているのは、この小説を読むとなかなか感慨深いように思える。
企業のトップは、時代の先を読む力が不可欠。
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